未来の生活を考える
2019年現在、様々なサービスやモノが溢れ、IT技術の発展により生活は非常に便利になりました。自宅に居ながら様々な物を手に入れることが可能になり、人とのつながりも機械を介して世界中どこからでも獲得することができるようになっています。
以前の空き家問題についての記事にも少し書きましたが、そのような時代になったにも関わらず地方においては人が減少していく一方であり、今後それぞれの地方において人を集めるための取り組みを行っていかなければならなくなっていると考えられます。
今回はそのことについて、私の思うことを書いていこうと思います。
↓以前の空き家問題についての記事はこちらから。
「未来の生活」と言えば話が大きくなってしまいますが、20年後、30年後、我々の生活はどうなっているか考えたことがありますか?間違いなく今よりも科学技術、情報技術は進歩して、生活はより便利になっていることと思います。
私が生まれたのは1983年、今から36~37年前であり、物心がついたのはそれこそ30数年前になります。その時に今のような生活が来ると私自身は当然考えていなかったのですが、おそらくその当時の世の中に、「30年後はこんなものがあってこういう暮らしができていたら便利になる」と信じていた人がいて、そうなるように働きかけてきた結果が今の世の中であると考えられます。
ではそのことを踏まえて、改めてこれから20年先、30年先にどのような世の中が来るのか?
それは、自分が20年先、30年先にどのような生活を「したいか」と考えた結果見えてくるものなのです。言い換えるならば、これから20年先、30年先の世の中を考え、作り上げていくのは、今社会で活躍をしている全ての人々なのです。
世界を変えるような画期的な発明や、世界有数の大都市に限った話だけではなく、この小さな島国の一地方でも大きく変わる可能性は十分に秘めています。
「我々が高齢となった時に、この街で、このような暮らしをしたい」
という想いを持って働きかけていくことによって、環境が変わり、人やモノが動くことによってさらに環境が変わり、街は生まれ変わっていくものだと思います。
しかしそれには長い時間がかかります。5年、10年、はては20年、30年かかって少しずつしか変わることはできません。だからこそ「今」から自分自身が暮らしたい「暮らしを作る」ことを始めなければならないと考えたのです。
このようなことを考えるようになった発端は、私の勤める地域における医療介護福祉の現場での深刻な人手不足にあります。当然この業界に限ったことではないのですが、若い人たちが都市部へと流れていってしまうこともあり地方においては労働者が少ないという現状があります。個人病院など小規模な施設になると若手がほとんどおらず職員の平均年齢も押しあがり,まさに「老老介護」が行われているような場所も少なくありません。
少ない人数で多くの高齢者などの暮らしを支えていかなければならないために、労働者への負担は大きくなる一方です。医療介護福祉の仕事は(この仕事だけではないのは当然ですが)人が幸せに暮らすことができるよう支える仕事であると考えていますが、この「人の幸せ」は決して「誰かの不幸」の上にあってはならないものです。高齢者の暮らしを支えるために、労働者の生活の質が下がり、心身共に疲弊してしまう。そのような環境は持続することが困難であり、やがて破綻してしまいます。
この問題を解決し地方が今後何世代にもわたって持続していくためには、人の流れがあり循環する環境を整えなければなりません。そのため取り組むことの軸になる部分は何かと考えたときに、
「20年先、30年先後に望む暮らしを想像し働きかけること」
であると感じたのです。20年、30年後というスパンはおおよそ世代が一つ変わる間隔になると思われます。自らが一つ上の世代の年齢になった時にこの場所でどのような暮らしをしていきたいのか、ということを考え、形にしていくことによって「住みやすい街」はできていくのではないでしょうか。
私は今まで医療介護福祉の現場で、人の「生」と「死」について向き合ってきました。人が生きていく上で心身共に安定し、そして「死」を迎えていくためには、その人自身の状態を整えるだけではなく、その人を取り巻くヒトを含めた環境を整えることが非常に重要になることを実感したのです。
そのために自分にできることは何か。今の医療介護福祉の仕事ではどうしても及ばない部分があります。
「環境を変える」という部分については現状のままでは手が出せないと考えられるのです。当然、私一人で全てを行うことはできません。しかしながら建築という分野を学び「環境」についての知識と経験を身に付け、医療介護福祉の知識と経験を合わせた「複数の専門職を持つ者」として活動を行うことで、幅広く人と人のつながりを生み出し、地域を変えるという大きなことに取り組む力を発揮できるようになると考えられるのです。
それはちょうど、介護支援専門員が医療、介護、福祉の様々な知識を身に付け、多くの専門職者と連携を取って一人の人間の暮らしをマネジメントすることと同じであると思います。ゆくゆくは、医療介護福祉の分野と建築の分野を中心に各分野がより深くつながるための取り組みを行うことが私の目標です。
20年先、30年先に、地域の中で医療介護福祉がもっと身近に感じられる環境のある暮らしがしたい。私はそのために自分にできることを行い、働きかけていきたいと考えています。