理学療法士が建築家を目指してみた

「理学療法士」兼「介護支援専門員」の30代後半の医療介護福祉従事者が、「建築家」を目指し一念発起。住まいや環境などについて考えたことや、自分自身の考え方などを発信していくブログにしていこうと考えています。医療介護福祉関係の方、建築関係の方問わず、様々な意見を頂ければ幸いです。また、30代後半からの転職を考えている方にも何か参考になることがあればと思います。

「適応」と「進化」に対する私見

 前回の記事から早2か月…。

 ボチボチ再開しようかと思います。

 

 以前の記事で、「認知症の原因はストレス社会に対する人体の適応ではないか?」という話をさせていただいたのですが、この「適応」ということについて普段私が考えることを書いてみようと思います。

 ↓認知症の話はこちらから。

ms-trss.hatenablog.com

 

・「適応」と「進化」について

・人類の特徴「環境を変える」

・進化と生物としての人間の可能性

 

 

1.「適応」と「進化」について

 

 生物は長い年月をかけてその時々の環境に適応するために進化をしてきました。その根底を成すものは生物の設計図を言われるDNAの配列の変化です。

 DNAに記録されているものは「たんぱく質」の設計図であり、DNAが変化するということは合成されるたんぱく質が変化することになります。その結果、出来上がったたんぱく質が今までになかった効果を発揮することもあります。

 

 例えば、元来首の短かったキリンの「首の長さ」を司るたんぱく質に変化が起こり、今までよりも首が長くなった。この場合、結果として高い位置にある食料を確保できるようになり生存確率が向上したためにその変化を起こした種、そのDNAの変化が「環境に適応した進化」として存続していくこととなったのです。

 

 このような変化はいつもプラスに働いていたとは限りません。

 キリンの話に戻りますが、より高い位置にある食物を得るためにさらに「首の長さ」を司るたんぱく質に変化が起こり、さらに首が長くなったキリンが生まれていたとしましょう。長い首を支持するためにはさらに大きな身体を獲得する必要が生じ、身体全体が大きくなるようDNAの変化が起こった可能性があります。この地球という1Gの世界で大きな身体を維持するために必要なエネルギー量を確保するための食事量は増え、それを支えるだけの環境がなくなってしまう。その結果、その種は生存し続けることができなくなってしまい淘汰されることとなる。このようなこともあったかもしれません。

 

 そのような長い年月をかけた「Try and Error」を繰り返しながら、刻々と変化する地球の環境に生物は進化を続け、今現在の生態系に至っているのです。

 

 

2.人類の特徴「環境を変える」

 

 その中で「人類」という存在がいかに特殊か、ということを改めて感じさせられます。

 

 それまで「環境に適応」するように生体を進化させてきた流れにおいて、「脳」を進化させて「環境を変える」力を得たことで、生体の変化を伴わず環境に適応することが可能になったのです。衣服を身にまとうことで、体毛を増やす進化をせずに済んでいるのです。

 そして現代において、人類における科学の発達は環境に適応するという目的を超え、生活をより快適に行うために周囲の環境を変えるに至っています。身近なもので言えばエアコンがいい例であると思います。冬の季節、寒さをしのぐだけではなく、空気清浄などの機能も備えている。身の回りを今の身体で過ごしやすい環境にすることができるのです。

 

 その中にあっても、生体として変化し続ける機能を失ったわけではありません。人類の身体は変化し続けています。

 

 先日某テレビ局の番組でDNAのスイッチという話をしているのを観ました。DNAスイッチというものは、あるたんぱく質をコードしているDNAからタンパク質合成までのプロセスを発現させるかさせないかを司るものであり、このスイッチがオンになるとそのたんぱく質を多く発現しそれに応じた身体の効果を生じるようになるということでした。「進化」のように長い時間、世代を通してのDNAの変化だけではなく、生体が生きている間にもその生活上での刺激によってDNAのスイッチは切り替わるというものでした。

 

 健康志向によりジョギングやサイクリングなどを行う人が増えていますが、日常生活において運動機会を多く持つ人は、その分筋肉への刺激が多く、筋たんぱく質の合成も多く行われます。そうすることによって、筋肉の合成を促すDNAスイッチがオンの状態になり、筋肉がつきやすい体質になることが予測されます。これは逆に考えると、運動機会の少ない生活をする人は、そのスイッチがオフになり、なかなか筋肉がつきにくい体質になってしまうということも言えることになります。

 体温調節についても同様です。空調設備の発達に伴い、「汗をかきにくい人」が増えてきていると言われています。本来人間は、体温を下げる手段として汗をかき、体表の水分が蒸発する際の気化熱で体温を下げるという機能を備えています。しかしながら空調設備の恩恵により「体温が上がる」という機会が減ってしまうことによって、その「汗をかく」という一連のメカニズムに関する機能を担う器官が未熟になってしまっているというのです。これもひとえに環境に対する生体の適応であると考えられます。

 

 人間の身体は37兆個もの細胞で構成されていると言われています。その一つ一つを維持するために代謝が行われ多くのエネルギーを消費しています。生体としては、何も不便がないのであればできるだけ最小限の機能を備えている状態でいる方がエネルギー消費も抑えられ生存に有利になると判断されると考えられます。生体におけるエネルギーを発生の大部分は、細胞内に住んでいるミトコンドリアという器官に頼っているからです。ちなみにミトコンドリアミトコンドリアDNAという生体の細胞核にあるいわゆるヒトDNAと呼ばれるものとは異なるDNAを持つ器官です。興味のある方は「細胞内共生説」を調べてみてください。

 

 細胞を維持していくためにはエネルギーを大量に消費する。それならば必要ない機能はオフにしてできるだけ省エネで生存できるようにしよう。生体がそう判断し、生体としての人間の機能をいわゆる「退化」させてしまう可能性がある、ということなのです。

 

 最初に述べた認知症の原因の話についても、高度の身体的精神的ストレスを受ける環境に身を置き続けることで、生体は防御反応としてどうにか回避しようと生体を作り替えます。その結果として感情を司る前頭葉の脳細胞をアポトーシス(プログラムされた死、自然死)させ、「何も感じなくさせてしまえば手っ取り早いよね。他の機能残しておけば死にはしないし」という判断をDNAレベルにおいて生体が下している可能性があるわけです。

 

 先程は空調設備の例を挙げましたが、交通技術の発達により歩く機会が少なくなりました。オートメーション化により、身体を動かさずとも様々なことができるようになってきました。「暮らしの便利さ」は格段に向上していますが、それが生物としての人間の身体に及ぼす影響は決してプラスだけではないはずです。

 

 そういった意味でも、今後は便利さの中にもやはり人間がこの地球上に生存する一つの「生物」としての尊厳を維持していくことができるような生活環境を構築していくことが重要になっていくのだと思います。

 

 数年前より「バリアフリー」に対する「バリアアリー」という考え方が出てきました。生活環境におけるバリアを無くし、転倒などを未然に防止する環境は重要なのは間違いありません。しかしながら動作上のあらゆる障壁を除いてしまうことはそこに住まう人の残された機能を失活させてしまうことにつながりかねません。ある程度の「危険」を残すことによって、その危険を回避するためのアクションが起こり、その行動を通して生体としての機能を維持することが可能になる、という考え方なのだと私は解釈していますが、「危険だから」という理由だけで「安全」という環境だけを与えていくことは、その対象者をDNAレベルで機能低下させてしまうことにつながっていくと考えられるのです。

 

 日常生活を通して、人間が『自然な形で脳と身体を使う環境』というものを考えていきたいと思います。

 

 

3.進化と生物としての人間の可能性

 

 話を戻しますが、人間をはじめとした生体はその環境に「適応」するために「進化」してきました。生存の危機に及ぶような状況になるといわゆる突然変異と呼ばれるDNAの変化を起こした種が生じやすくなると言われています。先に述べたよう、それも全て発現するたんぱく質の性質によるものなのですが、この「たんぱく質」がどれほどの機能を持ちうるのか、今後の研究に興味が持たれます。

 

 人間の目は光に反応するたんぱく質と、色に反応するたんぱく質として三原色それぞれに対応したたんぱく質を合成できますが、世の中には赤外線や紫外線を見ることのできる生物がいます。それは赤外線や紫外線に反応するたんぱく質を合成することができるからです。ということは、何かの拍子に突然変異で赤外線や紫外線を「見る」ことのできる人間が生まれる可能性があります。

 

 その考え方で言えば、この世の中の物理的な刺激は、その刺激に反応するたんぱく質が存在すれば感受可能である可能性があると言えます。MRI室の前で不快を感じる人がたまにいますが、この人はひょっとしたら身体のどこかで磁場を感受しているのかもしれません。「霊感が強い」という人も、今はまだ解明されてはいませんが霊的な物に何かしら物理的なシグナルがあり、それを見たり感じたりするたんぱく質を持っているという可能性だってあるかもしれないのです。

 

 そのように考えていくと、これからも人間はその時の環境によってどのようにも「進化」し続けていくことができるのだと思います。

 

 地球から抜け出し宇宙へと生活の場が広がっていく未来もそう遠くはないように感じられてきました。これからも進化し続ける生物として、日々を感じていく暮らしをしていきましょう。