病院での仕事について
大阪に来て5ヶ月になろうとしていますが、私の現在の仕事について少し書いてみようと思います。
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私は理学療法士としてリハビリの仕事をしています。今年の3月までは2年ほど介護支援専門員(ケアマネージャー)として働いていたのですが、今回大阪に来るにあたり、改めて理学療法士として勤務させていただくことになったのです。
今回私が主に担当することになったのは、「地域包括ケア病棟」という病棟になります。あまり聞いたことのない病棟であるかと思われます。
入院することになった患者は、治療を受けることで病気を治し退院していくのですが、単純に病気の治療が終われば入院前の生活に戻ることができる…というわけにはいかない方もいます。
高齢者に多い例として、入院前のような生活を送ることが困難となり、介護保険サービスの調整が必要になったり、あるいは自宅での生活が難しくなることから施設入居を検討したり…といったことが往々にしてあります。
そのような場合に、60日以内という期限を設けて退院に向けた調整を行うための病棟がこの「地域包括ケア病棟」ということになります。
私がこの病棟を担当させていただいた理由の一つとしては、介護支援専門員としての経験が挙げられると言えます。
退院後の生活を考えていく上で、単に身体機能や日常生活活動だけでなはく、「その人らしい人生の送り方とは」という部分まで視野に入れた支援というのは、従来の病院ではなかなか行われていないのではないかと思われます。
確かに「病院」という医療のサービスに求められることは第一に「心身の疾患・障害を治すこと」であり、患者自身の生き方であったり、真の意味での生活の質(QOL:Quality Of Life)については、介護・福祉サービスの分野が主として担う、という認識が強いためではないかと思います。
そのために私自身が理学療法士としての「医療」サイドからの立場と、介護支援専門員としての「介護・福祉」サイドからの立場の両方を通して感じたことは、この「医療」と「介護・福祉」の間には、まだ「壁」とは言わずとも何かしら「仕切り」のようなものがあるのではないか、ということです。近くて遠い、何かそういうものを現場レベルで感じることが実際にあるのです。
そのような現状がある中で設けられたこの「地域包括ケア病棟」という病棟は、まさにその「医療」と「介護・福祉」の間の垣根を取り払う場所でなければならないと感じます。さらに言えば、「医療」と「介護・福祉」の間だけにとどまらず、「病院」という施設がもっと地域に開かれた場として、様々な業種、様々なサービスと盛んに連携を取れる場になる可能性を持つようになることがこれからは求められるのではないかと思うのです。
高齢者に限った話ではありませんが、長期入院を強いられた時に、毎日の代わり映えのしない入院生活で生きる意欲を失い、人生の楽しみを忘れてしまう、ということはよくある話ではないかと思います。そのような状態では、なんとか退院したとしても、在宅での生活を継続していくことが難しくやがて入退院を繰り返すようになり、そのまま寝たきりになっていく…そんな患者が多くいたことも確かであると思います。
しかし、その入院生活の中で、新たな楽しみとの出会いがあったら?新たな生きがいを見つけることができたなら?
「入院」というイベントが持つ意味、人生に与える影響が大きく変わるのではないかと思います。
例えば、入院先の病院で絵画や料理、美容、ボランティア活動、活花、植栽、読書、旅行…あらゆるサービスに触れ、それが新たな生きがいになる。そのことで退院後の生活に楽しみを持つことができ、活動量が増える。そのために病院と、各種サービス機関が連携をとり、入院患者に対しても多くのサービスを提供していく。
それはただ患者の生活、人生だけの話にはとどまらず、地域の活性化、経済活動の活性化、健康寿命の増進など多くの分野に対してプラスに大きく働いていく可能性を秘めています。
病院は病人が行く、ということから、どこかネガティブなイメージが強く、「楽しみ」というものに対してタブー視する傾向があるのに違いはないと思います。しかしながら、病院は「病気を治療するために行く」という場所から、「生き方を考え、生き甲斐を見つける場所」になり得ると私は考えるのです。そのためには、「病院」そのものが開かれ、多くのサービスと積極的につながりを持つことが求められる時代が来ると思うのです。
以前の記事で「還元型の社会について考える」という記事を書きましたが、まさに「病院」という機関がその役割を変えることによって、地域を大きく変えることができると思います。
今勤務させていただいているこの職場で、地域における病院の役割、そして地域の中での様々なサービスの繋がりについても考えていくことができたらと考えています。