理学療法士が建築家を目指してみた

「理学療法士」兼「介護支援専門員」の30代後半の医療介護福祉従事者が、「建築家」を目指し一念発起。住まいや環境などについて考えたことや、自分自身の考え方などを発信していくブログにしていこうと考えています。医療介護福祉関係の方、建築関係の方問わず、様々な意見を頂ければ幸いです。また、30代後半からの転職を考えている方にも何か参考になることがあればと思います。

30代後半からの転職 背中を押してくれたもの

 自分の中で心の奥底に押し込んでいた「ものつくり」に対する思いが爆発し、転職に向けての行動を開始するに至った経緯について書いてみようと思います。

 安っぽい小説のような話ですが、ご興味がある方はお付き合いください。

 

・始まりは親友のSNSへの投稿

・これは人生の転機なのか?

・妻への告白

 

 

1.始まりは親友のSNSへの投稿

 

 ある日、某SNSに大学時代からの親友が投稿をしているのが目につきました。普段ほとんど投稿などしない親友の、本当に何気ない投稿。その投稿を見た時に、なぜか連絡を取らないといけないような気持になりメールを送りました。

 その親友は会うのは数年に一度、メールなどのやり取りも一年に数回する程度なのですが、私自身の人生の節目には必ずと言っていいほどいる人間で、今回も「何か」を感じて連絡を取りました。

 

 大阪に住むその親友とトントン拍子に会うこととなり大阪へ。久しぶりに学生時代の話や現在の仕事の話、親友が嵌っている真空管アンプの話に、くだらないアホみたいな話…色々なことを語り、その中で自分自身のこれからのことについても話すことになりました。

 

 自分のやってみたいことと、それを成す為に解決しなければならない問題。

 

 私の場合その問題とは主として経済的な面についてのことが現実的な問題だったわけですが、その時の親友の言葉で考え方が大きく変わることになったのです。

 

 その言葉とは、

「お金のこととかは、『解決できる問題』だから大した問題じゃないやんか。

 やろうとしてることに対して才能がないとか可能性がないっていうのは、どうにもできない問題だからどうしようもないけど。

 世の中の人の大半は、そんな才能とか可能性とかがなくて色々なことを諦めていくことがほとんどなんやから、才能や可能性があるってことは生かしていった方がいいと思うで。」

と、いうこと。

 

 「解決できる問題は問題じゃない」って言葉を聞いて、何か自分を覆っていたものが取れたような、そんな気持ちになり、「目指していいんだ。現状にとどまることにこだわらなくてもいいんだ」と感じました。

 それまで、決して今後進むことがないと思い蓋をしていた心の中の箱が開き、「ものつくりを仕事にする」ことへの想いが溢れてくる感覚を覚えたのです。

 

 

2.これは人生の転機なのか?

 

 建築家への道へ進みたい!と行動を始めると、なにかこういわゆる「歯車が動き出した」という様に様々なことがその方向に向かって動き出す感じがするもので。

 地元で空き家問題など建築関係での取り組みを行っている人と出逢ったり、SNSで突然建築事務所の方からフォローされたり…どんな些細なことでも「これってもしや?」と思ってしまったり、不思議な体験をしたような感覚になったり、という心理状態になってしまうのです。全てのことが背中を押してくれている?という感じです。

 気が付けばネットの検索履歴が「人生の転機 予兆」「人生の変わり目 乗り越えるには」「40歳 転職」みたいなものばかりになってきて、それらの記事を読むたびに、

 「あー、これ分かるわー!」

 「そうそう、それそれ。今の自分そのまんまじゃん」

って思ってばかりいました。

 一時期どんどん自分自身に「これは人生の転機なのだ」と言い聞かせるような毎日になっていたと思います。

 

 その中で様々な方々に意見をもらったりもしたわけですが、相談をした職場の同僚や知り合いも肯定してくれて心の励みになる一方、皆、同じことを聞くのです。

 

「家は大丈夫なの?」

 

 そう、やはり家庭のこと、経済的なことが問題として現実にそこにあるのです。解決できる問題ではあるのかもしれないけれども、非常に大きな問題。これから建築家を目指すということは、間違いなく妻に大きな負担をかけるということであり、子供たちにも負担をかけることになるのは明らかでした。

 

 その不安に対して、具体的にどのようにして乗り越えていくのか。

 

 色々調べました。これから数年の短期的な見通しだけではなく、5年先、10年先、果ては20年、30年先まで見越した上で、これからの数年をどのように過ごしていくのか、ということ。私自身が不安なままで妻を安心させることは当然無理なので、あらゆるパターン、あらゆる状態、あらゆる可能性を考え、説明をする準備をしたうえで妻に話をすることにしました。

 それで妻が「No」と言えば、それでいい。私にとって一番大切なのはやはり家族なので、家族を失ってまで目指すものではないと決めていました。

 おそらく、私の今までの人生の中で一番「自分自身のこれからのこと」を考えた時期なんじゃないかって思います。

 

 

3.妻への告白

 

 自分の中で納得できるまで考えて、いざ妻へ告白。

 親友や同僚、仕事関係で付き合いのある方々…どの人に話す時よりも緊張しました。「No」と言われればきっぱりと諦めると決めてはいたものの、「No」と言われることに対して不安の気持ちを抱いてしまい。まるで面接試験を受けるような、そんな気持ちでした。

 兎にも角にも、妻に話をするに至ったわけです。

 

 建築家を目指したいという気持ち。目指すとなれば学校に行くことになるから、家族に大変な思いをさせることになるということ。もし行くとなったら、どのような方法で経済的な面や生活面をフォローしていくのか…など。

 

 妻は、不安こそ口にはしましたが否定することは一切なく、認めてくれました。

 それどころか、私の考えの至らなかったところに対しての意見や提案までしてくれました。

 本当に、妻には感謝しかありません。

 

 

 

 こうして私は、30代後半からの転職に向かって行動を開始するに至ったのです。

 

 私の背中を一番押してくれたのは、妻でした。

 

 感謝。

なぜ建築家を目指すのか?

 そもそも、私が何故「医療介護福祉」の分野から「建築」へ方向転換をしようと考えたのか?という話になりますが。

 

そのきっかけを大きくまとめると、

 

・現在の仕事で感じた「環境を整えること」の重要性。

・自分の人生とか生き方ってなんだろう。

・ものつくりが好き!

 

の3つになります。

 

 

1.現在の仕事で感じた「環境を整えること」の重要性。

 

 現在理学療法士としてリハビリの仕事をしていますが、在宅生活を考えていくうえで必要なことに住環境の整備があります。身体機能を評価し、必要な訓練を行っていくことは言わば在宅生活へ向けた「人」からのアプローチです。医療従事者として、一人の理学療法士としては、当然身体機能が可能な限り改善することを目指してアプローチしていくわけですが、障害を持っている場合や、加齢に伴う変化が起こっている場合などには、「人」からのアプローチだけではその人の生活や暮らしを再構築していくことが難しいことは多々あります。

 そこに、その人の住まう暮らしの基盤である環境を整える「住」からのアプローチを加えることで、身体機能として不足している部分を補い、また、できることをより快適に行うことができるようになります。

 人とその人が住む環境が両方向から歩み寄ることにより「丁度よい暮らし」が構築できるのです。

 

 また「環境」という話は、一個人のことだけではありません。特に地方においては医療介護福祉の面での人材不足も大きな問題として取り上げなければならない現状があります。地方での人口流出、超高齢化は、医療業界だけでなく多方面にわたって問題となっています。

 「若者がいない!」

 「なぜ人が減っていくのか?」

 これも地域、社会としての「環境」に起因する部分が大きいのではないかと思うのです。この件についてはまた別の記事で取り上げたいと思います。

 

 そのようなことを日々の仕事の中で感じ、「環境」の持つ意味と重要性を考えることが多かったのです。

 

 

2.自分の人生とか生き方ってなんだろう。

 

 理学療法士と兼務して介護支援専門員の仕事をする中で、高齢者の生活や生き方を直に感じる機会が多くありました。戦時中から戦後、激動の時代を生きてきた人々の生き方を聞きながら(昔の苦労話や体験談をされるのが好きな方多いですよね)その人の生活を考えて介護支援の計画を立てていくのですが、そのような「人の生き方」を聞いていて、ふと

 

「自分の、自分らしい生き方って何だろう?

 本当に自分がやりたいことって?」

 

という疑問を持つようになりました。

 大学に通い、理学療法士という国家資格を取り、医療の現場で仕事をして、業務上の必要性から介護支援専門員の資格を取り、介護支援専門員として介護福祉の現場に出て…。

 医療業界に勤めだして気が付けば十数年(まだ十数年、かもしれませんが)。これからもずっとこの業界で仕事をしていくのだと思っていました。

「この業界で仕事をしていかなければならない」

っていう考えに囚われていたのだと思います。

 

 今回、この業界から離れることを考えたのは、決して理学療法士や介護支援専門員という現在の仕事に対するネガティブな感情からではないですし、「現在の職を極めたから次を」、という気持ちからではないということを断っておきます(相談した方の中にそう誤解されて厳しいことをおっしゃられた方もいらっしゃったので…)。

 私自身が改めて自分のことを考えた時に、 

 

 過去や現在に囚われずに、自分の気持ちに素直に、やりたいことをやっていきたい。

 

心からそれを望むようになって、行動することにしたのです。

 

 

3.ものつくりが好き!

 

 じゃあ自分の好きなこと、やりたいことってなによ?と、思ったときに、一番にきたものが

 「ものつくり」

だったのです。

 「環境が大事だ」とか先に述べていますが、むしろこの「ものつくりがしたい」っていう気持ちありきのことだったわけです。ただ、それを仕事にしていくには遅すぎじゃないか、とか、経済的なこととか、その他の様々な問題があって、今までずーっと心の奥底に抑え込んでいた「ものつくりをしたい!」って気持ちだったのですが、あることをきっかけに、ついに臨界点を超えて爆発してしまったのです。バーンって。このきっかけについても、またの機会に書いてみようと思います。

 

 

私が建築家を目指したのは、

「自分が本当にやりたいこと」を仕事にして生きていきたい

その気持ちからなのです。