理学療法士が建築家を目指してみた

「理学療法士」兼「介護支援専門員」の30代後半の医療介護福祉従事者が、「建築家」を目指し一念発起。住まいや環境などについて考えたことや、自分自身の考え方などを発信していくブログにしていこうと考えています。医療介護福祉関係の方、建築関係の方問わず、様々な意見を頂ければ幸いです。また、30代後半からの転職を考えている方にも何か参考になることがあればと思います。

還元型の社会について考える

 以前、私が鹿児島市内の病院に勤めてていた時に論文にした一つの構想に「還元型リハビリテーションというものがあります。(鹿児島リハビリテーション医学研究会会誌・平成24年8月・第23巻1号)

 今回はこのことについて書いてみようと思います。

 

・「還元型リハビリテーション」とは何か。

・この構想を、どうしていきたいか。

 

 

1.「還元型リハビリテーション」とは何か。

 

 一般的にリハビリテーションは障害などを抱えた方が運動療法などを通して身体機能を改善することを目的として行われます。元々「リハビリテーション」という言葉の持つ意味は、「全人的復権」、つまり一度障害を抱えた人が身体的にも精神的にも社会的にも復帰することにあります。

 リハビリテーションを通して行われる身体活動や精神活動は、それを行う者の心身機能改善という結果を得るために行われ、そのことによって最終的には「その人」の生活の質(Quality Of Life:QOLを高めることを目標とするのです。

 

 ここで私が考えたことは、リハビリテーションを通して行われる身体活動や精神活動のエネルギーを、ただ「心身機能の改善」という部分にのみフォーカスして行い個人の範囲に帰結させるのではなく、何かしらの「生産性」を与えて周囲に還元するという環境を作るのはどうだろうか、ということです。

 リハビリテーションを通して自己の心身機能が改善するだけでなく、自分の行ったアクションが何かしらの形で周囲の環境に還元される、という達成感がまたモチベーションにつながり、あるいは社会貢献という形で自己肯定につながることが期待できます。

 「リハビリテーションを通した『QOL(生活の質)の向上』」という抽象的で漠然とした概念に、「社会への還元」という明確な意味付けを行うことができる構想であり、革新的な考えになると考えていたのですが、論文投稿当時それ以降に続くものを打ち出すことができず広げることが叶わなかったものです。

 

 ちなみにこの論文では、リハビリテーションで使用するエアロバイクについて、当時勤めていた病院でのある期間での使用量から、発電機を装着した場合の発電量を計算し、それがどの程度の発電量が得られ、売電したらいくらくらいになるのか、といったことを例示として挙げています。

 ここで私は運動エネルギーを電気エネルギーに変換し社会活動に還元する(この時この構想のことを、エコロジーとリハビリの融合、「エコリハ」だ!とか言ってます)ことを示したわけですが、決して電気エネルギーだけが対象となるわけではありません。

 動作レベルの高い方であれば農生産活動をリハビリテーションの一部として実施して生産物を得る方法もあると思いますし、細工などの軽作業が可能な方は上肢の機能訓練の一環として革細工や木工細工の作成などを通して作品を生産する方法などもあります。また、地域とのコミュニケーションとして近隣施設との交流を通して精神活動を還元する方法もあります。高齢者施設と幼児施設が併設した幼老複合施設などがこの一つの例になると思われます。

 

 

2.この構想を、どうしていきたいか。

 

 このような取り組みは、リハビリテーション分野だけにとどまるわけではありません。スポーツジムなどがトレーニング機器に発電機を付けて発電量に応じてキャッシュバックを行うという取り組みを行っているということも聞いたことがあります。

 様々な方法で人の行動や活動を社会に還元することはできると考えられますが、実際にそれぞれの事業所単位で行うとなると問題になってくるのがコストや費用対効果になるのだと思います。

 

 先にも述べた通り人間の行動や活動に「生産性」を持たせ、付加価値をつけて「社会に還元」するいうことは非常に有効な手段であるにもかかわらず、広がらないのはこのコストの問題が大きいと考えられます。

 

 そのような中で、これがある特定の「事業所の取り組み」ではなく「社会での取り組み」として多くの人に認知されるとどうなるでしょうか。多くの人にこの考えを知ってもらい、興味を持たれたり賛同される方々の様々な意見や提案、発想が加わることでこの取り組みそのものの価値が高まる可能性があります。そうなると「市場での需要」が生まれ、企業や研究機関での開発が進むことになり技術の向上に伴うコストの低下、費用対効果の向上が起こり、この問題は解決できると予測されます。そうすることで一般社会への普及へとつながっていくことが期待できるのです。

 

 日常生活のあらゆる場面で、自分の行動や活動がその本来の目的とは別にたとえ「おまけ程度」であっても付加価値を持って「社会に還元」されていく。そのような社会になる「環境」を作り上げていくことが、私の目標とするいくつかの大きな課題の中の一つなのです。

 AIの発達により、今後様々な仕事が人から機械に代わっていく時代が近づいているといわれています。そのため「人が行う意味」であったり、「人が行う価値」というものが改めて見直され、その意味や価値を示すことが一つの判断材料として重要視されるようになっていくのだと思います。逆を言えば、これからの時代は、人の行動や活動に「意味」や「価値」がないと判断されれば、それ自体が社会から淘汰される存在になってしまう危険性を孕んでいるとも言えるのです。

 そのような背景から考えても、もしこの目標を達成することができたならば、社会を変えることができると私は考えています。「環境」によって「人が行動や活動をするきっかけ」を新たに生み出し、人の行動や活動に「意味」や「価値」を与えることになる可能性があるからです。

 現時点ではその目標を成し遂げるための方法や手段が全く見当がつかない状態なのですが、そのようなことを考え続けていき、何年、何十年かかってもいいので目指してみようと思っています。

 

 そのために、まずはこの考えを社会に広げる必要があります。私一人の知恵や行動力だけでこの考えを形にしていくことはできないものであることは分かっているので。

 7年前、この論文を出したときにはそれができずにいました。できなかったのではなく、やらなかったのです。ただ論文という形で世に出しただけで、それ以外のどのような形であれ、もっと多くの人に「発信する」ということをしなかったことが問題であったと認識しています。ですので、今回このような形で発信させていただきました。

 このブログを読んでいただいた方でこの考えに興味がある方や面白いと思っていただいた方には是非拡散してもらいたいと思っています。多くの人に知っていただき、いつか社会を変えるきっかけになるように。

 

※もし私の上記論文に興味があるという方がいらっしゃれば koku83@yahoo.co.jp までご連絡ください。